子育て待合室

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がんばらない

 新学期が始まって1ヵ月がたって、こどもたちも新しい環境にだいぶ慣れてきたことでしょう。親子ともども、当初の緊張もほぐれて、新生活を楽しむ心のゆとりも出てきたところでしょうか? そろそろ、年齢の小さいこどもたちから体調をくずしてくる時期です。天候も不順になりがちなシーズンです。かぜなどをひきやすい条件がそろいました。  朝、いつものように起きてくることができない、あるいは、午後の帰宅時の様子にどうもいつもの元気がない、食欲がない、などちょっとした体調の変化を見落とさないようにしてあげてください。体調不良でも、こどもたちは新しく始まった毎日の生活が楽しくて楽しくて、どんなことがあっても絶対に休まない、と言うでしょう。

 

 でもそこは、親がじっくり言って聞かせなければなりません。小さなこどもたちは、親から離れて集団の中にいるときに、何か異変があってもどうしたらいいのかわかりません。異常を誰かに伝えることすらできないかもしれません。朝の判断ミスで送り出されて、こどもは帰りの時間がくるまでただひたすら、つらいのを我慢するはめになります。  前日の夜に熱が出てぐったりしていても、朝になるとすっかり元気になって見えることがあります。朝の時点で熱が下がっているからといって、何かの病気が治っているとみなすことはできません。こんなときは、もう1日、お母さんの目の届くところで様子を観察して、本当に元気を取り戻せたかどうかの確認をしてください。集団にもどってもみんなと一緒にいろいろなことをやっていける状態かどうかを見極めていただきたいのです。

 

「前の日に熱がでていたら、その日1日はお休み」  これをルールにしてください。

 

 こどもたちは、体調が悪いときにがんばる必要などありません。どこかおかしい、という身体感覚を無視しないでください。からだが疲れて悲鳴をあげているというときには、がんばらせずに、からだの言い分に耳を貸してください。そしてまず、からだを休ませてあげましょう。自分のからだをいたわることが、からだの弱い人々への思いやりにも必ずつながっていくことでしょう。  自分のからだをいじめてまでがんばって、へとへとになりながらも毎日通ってしまった結果、皆勤賞などという形でほめられたりすると、それは、ほかの人に対しても、体調不良のときでもがんばるべきもの、という押しつけを生むようなことにならないでしょうか?

 

 皆勤賞というのは、1年間なら1年間、本当に病気もせずに健康にすごせて良かったですね、という意味の賞であるはずです。それが、皆勤賞をとらせるために、無理じいをするなどということになると本末転倒で、かえってそんな賞なら、ないほうがいい、ということになります。  こどもたちが、心身ともに健康な集団生活を送れるように守ってあげること。これは、家庭の持つ大切な機能のひとつであると考えています。


2004年 4月 『子育て待合室』文芸社 刊より

岩田裕子先生

1977年、千葉大学医学部卒業。
千葉県内の病院で小児科勤務医として研鑽したのち、1994年、千葉市にて小児科クリニックを開業。
2004年~2008年 千葉市小児科医会会長
2008年 千葉市医師会 理事

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